「蒸らし」で失敗する原因とは
膨らまない=失敗とは限らない
ハンドドリップの動画を見ていると、お湯を注いだ瞬間にコーヒー粉がまるで生き物のようにムクムクと膨らむシーン、ありますよね。
あれを見て「よし、自分も!」と意気込んでやってみたものの、シーン…と沈黙したまま全く膨らまない。
「あれ?淹れ方間違ったかな?」なんて落ち込んだ経験、僕にもあります。
結論から言うと、膨らまないからといって必ずしも美味しくないわけではありません。
でも、なぜ膨らまなかったのかという原因を知っておくことは、安定して美味しいコーヒーを淹れるためにめちゃくちゃ重要です。
実はこれ、僕たちの腕の問題というよりは、豆の中で起きている物理現象の問題であるケースがほとんどなんです。
仕組みさえ分かってしまえば、無駄に焦ることもなくなりますし、逆にあえて膨らませないなんてコントロールもできるようになりますよ。
コーヒー粉の中で何が起きているのか?
そもそも、なぜコーヒー粉はお湯をかけると膨らむのでしょうか。
これは魔法でもなんでもなく、豆の中に閉じ込められていた炭酸ガス(二酸化炭素)が、お湯の熱によって放出される現象なんです。
コーヒー豆を顕微鏡で見ると、ハニカム構造のような無数の小さな穴が空いています。
焙煎された豆は、この穴の中にパンパンにガスを溜め込んでいる状態なんですね。
そこにお湯を注ぐと、お湯に押し出される形でガスが一気に外へ出ようとします。
これが、あのもこもこの正体です。
では、なぜ蒸らしが必要なのか。
それは、このガスがお湯の浸透を邪魔するバリアになってしまうからです。
ガスが勢いよく出ている間は、お湯が粉の中心部まで染み込めず、表面を滑り落ちていってしまいます。
これだと、コーヒーの成分を十分に引き出せません。
なので、最初に少量のお湯を注いでガスを追い出し、粉全体にお湯が通りやすい道を作ってあげる。
これが物理的な蒸らしの目的であり、抽出準備というわけです。
つまり、膨らまないということはガスがないかガスが出にくい状態である、というシグナルなんですね。
膨らまない3つの原因
メカニズムが分かったところで、実際に膨らまない原因は大きく分けて3つあります。
豆の鮮度が落ちている(ガスが抜けている)
コーヒー豆の中のガスは、焙煎直後がピークで、時間が経つにつれて自然と空気中に抜けていきます。
焙煎してから1ヶ月以上経った豆や、スーパーで粉の状態(挽いた状態)で売られているものは、すでにガスが抜けきっていることが多いです。
対策としては、焙煎したての豆を買うに限ります。
さらに言えば、粉ではなく豆のまま買って、飲む直前に挽くこと。
豆を挽くと表面積が増えて一気にガスが抜けてしまうので、直前に挽くだけで膨らみ方は劇的に変わります。
焙煎度が浅い(浅煎り)
最近流行りの浅煎り(ライトロースト)は、深煎りに比べて豆の組織が硬く、ガスが発生しにくい傾向にあります。
また、お湯が浸透しにくいので、ガスの放出も穏やかです。
浅煎りの場合は、膨らまなくてもそういうものだと割り切ってOKです。
ただ、ガスが出にくいので、蒸らし時間を少し長めにとったり、スプーンで軽く撹拌して馴染ませたりするのもテクニックの一つです。
お湯の温度が低い
ガスの放出は化学反応の一種なので、温度が高いほど活発になります。
ぬるめのお湯で淹れると、ガスが勢いよく出てこず、静かな反応になりがちです。
もし膨らみを重視したいなら、蒸らしの時だけ少し高めの温度(90℃以上)のお湯を使ってみるのも手です。
ただ、温度が高すぎると雑味が出ることもあるので、そこはバランス調整が必要ですね。
蒸らしを成功させるための三種の神器
僕が実際に使っていて、蒸らしのコントロールがしやすくなったと感じるアイテムを3つ紹介します。
密閉性の高いキャニスター(保存容器)
せっかくの新鮮な豆も、保存状態が悪いとすぐにガスが抜けてしまいます。
僕が愛用しているのは、フタにパッキンがついていて空気を遮断できるタイプや、中の空気を抜ける真空タイプのキャニスターです。
これに入れるだけで、豆の持ちが全然違います。
「あれ、まだ膨らむ!」という感動が長く続きますよ。
極細口のドリップポット
蒸らしで失敗あるあるなのが、お湯をドバっと注いでしまって粉を崩してしまうこと。
注ぎ口が極端に細くなっているポットを使うと、点滴のようにポタポタとお湯を落とせます。
優しく粉に乗せるようにお湯を注げるので、均一に蒸らすことができます。
焙煎日の分かるコーヒーショップ
これはアイテムではありませんが、一番の解決策です。
スーパーの棚に並んでいるものではなく、パッケージに焙煎日が明記されているショップで買ってみてください。
焙煎から3日〜1週間くらいの豆を使った時のあの爆発的な膨らみは、一度体験すると病みつきになりますよ。

